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執筆者の写真Kei Tomoda

【コラム】企業の生存戦略のキモは人事戦略にあり

更新日:2023年3月5日


急速に変容している「働き方」


先のコラムで、ライフワークインクルージョンについてや、企業の社会変化への対応力について書きましたが、その背景の一つに、急速に変容している「働き方」があります。


働き方改革はコロナ禍以前からあったものの、DXによるリモートワークなどの浸透により、働き方の多様性は一気に増大しました。

各企業は、働き手が望む働き方に対応していく必要性があり、その対応を怠ってしまうと、人材が離れていく可能性もあります。


いわずもがな、日本企業では長らく終身雇用が前提であり、人事は「管理」されるもので、働き手は上司や人事課の指示に従って働くことで安定した収入と仕事が保証されていました。

その前提が崩れつつある昨今は、ジョブ型雇用で社員の自律的なキャリア形成を重視する企業も増えています。

従業員が会社の1コマではなく、多様な背景・ニーズをもつ1個人として認め、それぞれが働きやすい環境を整えることが求められるようになってきました。



人手不足を打開するための働き方改革


働き方が変容する一方で、特に地方では採用難・人手不足が深刻です。

また、働きづらい職場は離職率の高さに反映されます。


優秀な人が集まり、定着するためには、雇用環境をアップデートし、働きやすさを追求していかなくてはなりません。

小さな企業であればあるほど属人化されている仕事を改めて、チームで共有し、リスクヘッジしていくことも必要でしょう。また、そうしたチームワークの評価制度を再設計する必要もあると思います。

どんなに小規模でも従業員のニーズは多様であるはずなので、その多様性を認めて、組織が変化していくことで、組織の持続可能性は高まります。

人材不足を補うための外国人労働者や高齢者、子育て・介護中などの多様な人材活用を進めるためにも不可欠な取り組みです。


多様な従業員のインクルージョンが成立すれば、さまざまな形のライフワークインクルージョンも充実し、長期的には組織の生産性も社会対応力も向上すると考えます。

(※ダイバーシティ経営の成功例:大橋運輸株式会社



人材はコストではなく、資本である


働き方改革を進めるうえで、「人的資本経営」という考え方が注目されています。

これまでの雇用制度では、人材は社内で育成し管理するコストだとみなされてきましたが、 「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値の向上につなげる経営のあり方」であると、経済産業省のホームページで紹介されています。

企業にとっての経済的メリットだけでなく、社員の健康や幸福感、社内の関係性の強化といった非経済的メリットにもつながるという視点も特筆に値します。


従来の経営では損益計算書や貸借対照表が経営管理の指標として用いられていたため、従業員への投資は後回しにされるどころか、真っ先にコスト削減の対象となっていました。

人的資本経営のもとでは、経営陣が中心となって人材戦略を立て、事業価値を高めるための「人への投資」を検討し、優秀な人材の確保や従業員のトレーニングを通じて、売上・効率・モチベーションなどを多角的に向上させることが求められます。


また昨今、「人を採用できない」と中小企業のみならず大企業からも異口同音に聞かれます。「できるだけ人件費を抑えたい」「安いコストで採用したい」このような思いを持っている経営者は多いことだと思います。

しかし、少子化により労働力が減少し、かつ、SNSや企業の口コミサイトなども多く存在する現代社会において、既に企業での働き方が可視化されています。「この会社では働き続けることが難しい」と判断されると応募も入社も躊躇する人が多いのです。

どれだけ働きやすい、働き続けられる会社を作るかは、人事部だけの仕事ではなくなってきています。



経営戦略としての人的資本経営


ここで大事な点は、人的資本経営は単純に「社員を大切にする」ことではなく、事業成果を高めていく経営戦略だということです。

個々の従業員の多様な能力や特性を把握したうえで、誰が適材適所なのか、誰が新しい時代にあったイノベーションを起こしうるか、誰がどのような価値観をもち、どのような貢献を目指しているのか、誰をどのように教育・育成するかなどを、自社のパーパスを共有しながら丁寧に検討する、

つまり、社員の存在を大事にして、能力を発揮してもらう。従業員の多様性を尊重し、働き方やモチベーションを改善するための企業風土づくりにも取り組む。

人材への投資を通して、いかに(人と)自社の成長につなげていくのか。しかるべきストーリーに則った取り組みでなければ、対内的にも対外的にも支持されないと思います。



人事戦略が企業の生き残りを左右する


人的資本経営によって人が育ち、会社への貢献度が増す。

そうした人材は社外に出て行くかもしれないが、会社には人材育成の経験と文化が醸成される。それは資産であり、そこにまた新しい人材が生まれ、貢献する。

この流動的な循環は、組織にとっても個人にとっても、そして社会にとっても非常に重要な資質になるのではないでしょうか。


あるグループに対して一律の人材育成を施すのではなく、丁寧な対話を通して、各個人に適したトレーニングや業務を検討するのはものすごく労力がいることです。

しかしそれが、中長期的には組織力となって返ってくるということがグローバルなレベルで認識され始めています。

今年中にも人事戦略を投資家に開示することが日本でも義務化される予定です。


人口減少社会で、企業の生存競争はますます熾烈になっていきます。

企業の生き残りのために、人事戦略を経営に織り込む視点が求められています。


 

弊社代表の友田はさまざまな事業再生・事業承継にかかわってきた一方で、自身も経営者として地方経済に携わっています。

副業人材の受け入れや社内ベンチャー立ち上げの支援なども行ってきました。


そのなかでは、いかに人材活用が難しいかに直面することも多くあります。

同質的な企業文化のなかで、トップダウンで物事が予定調和的に進んでいく。

これでは、イノベーションが期待できないどころか、社会の変化に対応できず企業は衰退していきます。


会社で働く人材が、どのように自社の課題に取り組み、将来的な企業価値の創造に寄与できるのか。

そのための人事戦略を経営戦略と連動させることで、企業も個人も成長し、社会を豊かにする流れが生まれていきます


逆の視点でいえば、人材不足だからといって、「人」を集めることに労力をさくのは徒労です。

たとえば、レジ係が足りない場合、必死に(低賃金で)働き手を探すことよりも、いまの人材を育成して、レジ業務をDX化したり、配膳ロボットを導入したりする方が、他の人材の負担も軽減され、レジ係の雇用にかかる労力も減り、逆に売り上げや労働環境は向上することでしょう。


「人材不足」を「人的資源(有限かつ消費するもの)」で補うのではなく、「人的資本(投資によって増大していくもの)」で補うことで、競争優位性を保ち、企業のサスティナビリティも高める。



☆人材マネジメントを担当している管理職の方や、経営・人事戦略の策定にお悩みの経営者の方など、ぜひご一緒に、人的資本経営に取り組みませんか。

ビズデザイン大阪までお気軽にご相談ください。







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