先日、武庫川女子大学にてキャリア論の講座にお招きいただき、友田のキャリアについての考え方を紹介させていただきました。
その中で主題としたのは、単に「キャリア(仕事)」だけではなく、「ライフ(人生・生活)」全体のなかの、キャリアの位置づけでした。
人生のポートフォリオを考える
以前、本Blog記事の中で、複数の仕事を組み合わせながら働く人のことをポートフォリオワーカーと定義し、それは「働き方であり、生き方である」という考えを紹介しました。
人生100年時代においては、変化を経験する機会が増えるため、選択肢をもっておくことの価値が増します。
そのために、組織にとらわれずに、絶えず探求を続け、独自のキャリアを創造し、複数のキャリアをもつことも含めて、戦略的に選びながら学び続ける必要性があると。
特に女性は、結婚によって転居を余儀なくされたり、妊娠・出産・育児でキャリアが中断したり、その後も子育てとの両立を求められたりすることがまだまだ多いのが現実です。
したがって、「ポートフォリオワーカー」的な働き方・生き方がもっと注目され、支持されれば、楽になる女性も増えるのではないかと思います。
同時に、転居や出産・育児など、多様な経験をする女性ならではの視点が、これからのダイバーシティ社会のなかではもっと必要とされるとも実感しています。
私自身、大学卒業後は定職におさまることはなく、失敗もたくさん経験しながら、結果的には産官学民のセクターでさまざまな経験を積んで、今に至ります。
女子大生を前にお伝えしたかったのは、「長い人生のなかで、どのような暮らしをしたいのか、何を大事にしたいのか、どのような働き方・仕事内容が目標なのか、自分がハッピーに過ごせる日々を増やし、Well-Beingを高めるためには何をすればよいのか」に向き合い、一つの企業で働き続けることだけを是とせずに、「自分の価値観・ライフのなかでのキャリアの位置づけ(人生のポートフォリオ)」を考えてみてはどうか、ということでした。
ワークライフバランスの終焉?
2020年から始まったコロナ禍で急速に進んだオンライン化。
中でもテレワークの浸透は、ワークとプライベートを完全に切り分けていた日本人の働き方を劇的に変えました。
プライベート空間である自宅で、子どもの世話をしながら/家事をしながら、ワークをすることで、オン・オフの切り替えは意味をなさなくなりました。
「ワーク・ライフ・バランス」は、ワーク(仕事)とライフ(プライベート)を天秤にかけて、ちょうどよいバランスを保つことで人生の質を向上させるイメージです。
これが、テレワークにより、ワークとライフの時間と場所が融合してしまいました。
「オンライン会議をしながら、子どもが横から割り込んでくる」
そのような光景はよく見かけますね。
ワークとライフを切り分けることができなくなった今、必要な視点は、「ライフ・ワーク・インクルージョン」ではないかと感じています。
どういう人生を送りたいかをまず考えて、そこから仕事を考える。
ライフの中にワークが包摂(インクルーシブ)されている状態で、家族や趣味などもライフの一部である。
このようにライフ全体を考え、実現できる人が増え、多様なライフスタイルが認められれば、それこそが真の働き方改革ではないでしょうか。
「かけあわせ」の強み
日本で初めて民間人校長になった藤原和博氏によると、「活躍できる人」とは、1万人に1人だそうです。
しかし、もし100人に1人のレベルの特技を2つもつことができれば、2つをかけあわせると(100×100)、1万人に1人の人材になれる。
3つならば、100×10×10(の1人)になればよい。
ポートフォリオワーカーのごとく、探求を続けることで独自のキャリアを創造し、かけあわえせることができれば、きっと活躍の場はあるはずです。
逆にいうと、一つの「専門性」はこれからAIによって代替される可能性があります。
大手企業が社員に副業を経験させることで、スキルアップや社内への刺激を期待する動きとも関連があります。(参考ブログ:企業の生産性向上のカギは副業人材の活用にあり)
ライフワークインクルージョンの考え方は、まだまだ馴染みがうすく、現実味も乏しく感じるかもしれませんが、新しいことを始めてこそ開ける世界がある。
若いうちにその可能性にチャレンジして欲しいと思います。
(もちろん、企業や行政側の環境整備が進められることも重要です。)
計画された偶発性理論
キャリア論では既に有名な考え方である「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)は、スタンフォード大学 教育学・心理学教授、J.D.クランボルツ氏が提唱したものです。
米国の一般社会人対象の調査によれば、18歳のときに考えていた職業に就いている人は、全体の約2%にすぎず、社会的成功を収めた数百人のビジネスパーソンについて、そのキャリアを分析したところ、約8割の人が「自分の現在のキャリアは予期せぬ偶然によるものだ」と回答したといいます。
そのことから導き出された「計画された偶発性理論」の5つの要素
1. 好奇心 [Curiosity] たえず新しい学習の機会を模索し続けること
2. 持続性 [Persistence] 失敗に屈せず、努力し続けること
3. 柔軟性 [Flexibility] こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
4. 楽観性 [Optimism] 新しい機会は実現する、可能になるとポジティブに考えること
5. 冒険心 [Risk Taking] 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
友田自身の経験から付け加えると、キャリア形成における偶然性のなかで割と大きな意味をもたらすのは、What(何をするか)だけでなく、How(どうやるか)と、Who(誰とやるか)です。
前向きに粘り強くチャレンジすれば、人との出会いに恵まれ、どうしたら目標に到達できるか、道筋がみえてきます。
また、仕事だけではなくプライベートも含めて、Want(したいこと)、Can(できること)、Must(やらなければならないこと)を整理する必要性を感じます。
ワークライフインクルージョンの実現に向けて
☆こんなふうに生きたい
☆こんな暮らしがしたい
☆自分が大切にしたいこと・やりたいことがある
☆だから、こういう働き方・仕事がしたい
☞ライフを中心にして、職業とキャリアを考える。
☞仕事を考えるときは、Whatだけじゃなく、HowやWhoも考えて!
☞リスクを分散させるために、副業兼業も。
☞商品・サービスだけなく、企業の理念や取り組みを知ってほしい。
☞みんなと違う方がオモシロイことがある。
ダイバーシティ型社会においては、いろんなことの経験値がものをいいます。
ビジネス界で注目されているアート思考では、「ないものを生み出す」ことに価値が置かれています。
一度しかない貴重な人生において、なぜその仕事をするのですか?
仕事を通して成長している実感が得られるでしょうか?
自分が大切にしたいものとつながっていますか?
自分が選択権・主導権を持っていますか?
仕事を含めたライフ全般に満足していますか?
軽視されているものはないですか?
「And most important, have the courage to follow your heart and intuition」
(一番大事なことは、自分の心と直感に従う勇気を持つことだよ) ーSteve Jobsー
「ライフ・ワーク・インクルージョン」ははからずもコロナ禍で表面化し、アフターコロナの社会で期待される新しい働き方・生き方ではないでしょうか。
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