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執筆者の写真Kei Tomoda

【コラム】経営者こそ、自己成長が必要だ


長老支配から抜け出せないオーナー企業


七尾市和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」では、2022年10月に、社長を務めていた53歳の長男が退任し、相談役で82歳の父親が代表取締役に復帰することになった。

父親の小田禎彦氏は、「確執でも何でもない」と強調し、「せがれはしっかりしている。外で鍛錬して、また復帰して力強く私と共にやってほしい」と語った。


異例のトップ人事について、背景にはコロナ禍での厳しい経営状況もあったようだが、経営に対する考えに一部相違があったとの見方もあるようだ。

加賀屋は日本一の旅館とも評され、小田禎彦氏がその大立役者なのは事実であるが、80歳を超えて社長に返り咲くことのほかに選択肢はなかったのか。


同じように、かつてのトップがCEOに復帰した例として、日本国内では、日本電産も記憶に新しい。永守氏の手腕は素晴らしいし、高齢が悪いわけではないが、どうしても「良い人材はいないのか」「長期目線で見ると、大丈夫な組織なのか?」と疑問を感じてしまう。

また、ソフトバンクグループの孫正義氏やファーストリテイリングの柳井正氏など、一度社長やCEOを退きながら再登板しており、カリスマ経営者であるが故、後継者問題が大きく立ちはだかっている。



時代の風にのったトップ交代


若い人は経験こそ乏しいかもしれないが、時代の「風」を感じる力がある。これからの時代は経験の蓄積も大事だが、新しい変化をどんどん取り入れ、咀嚼して対応する力の必要性が高まると考えている。


その点で、2023年1月に社長交代を発表したトヨタ自動車は時代の風を読んだ素晴らしい決断をしたと思う。


自分を「古い人間」と表現し、クルマ屋の限界を感じたと述べた豊田章男現社長。業界を取り巻く環境が急速に変化し、従来のパラダイムやその延長では未来にうまく適応することは難しく、新たな発想法やスキルが必要だと判断しての決断で、実に未来志向的だ。


そして、4月1日から新社長となる佐藤恒治氏はさっそく「EVファースト」を表明し、現社長の経営を継承しつつも、遅れをとっているといわれてきた領域を進化させる決意を表明した。

同様に業績好調のなかで経営者が交代したソニーは、あっという間に過去最高益を更新した。自身の交代を含めた経営者の責任というのは非常に影響力が大きいのである。



成功体験を手放せず、失敗をおそれる文化


一代で成功を築いたようなオーナー社長は、その成功体験に固執しがちだ。

日本電産の永守氏は、後継者に権限移譲しても自身の考えに100%そぐわないと退場できない。成功体験を手放せず、異質なものや自分が定義する失敗を受け入れられないのだ。

それでは後継者は育たないし、会社全体がカリスマ社長に忖度する文化から抜け出せない。


どこまでも自分ができると思っているとしても、時代は着実に変わっている。

そして、その時代感をとらえるのは、歳をとるほどに難しくなると思う。

そこで余計に成功体験に基づいた意思決定をしてしまい、ダイバーシティとインクルーシブから遠ざかってしまう。


友田は柏原市議会議員時代の平成18年に、柏原市の「市長の任期に関する条例」を議会をリードして、制定にこぎ着けた。その時の前任の市長が8期32年と長期政権であったたため、組織のひずみが現れており、全国で2番目の条例であったが、トップというのは変わっていかないと組織は社会の変化に対応できないという信念は15年以上前から変わっていない。


いまは多くの研修講師もしているが、「イノベーションにとりくみましょう」という研修で、「成功事例はないのか?」という質問がでることが往々にしてある。

失敗したくないという意識が非常に強いのだ。

減点主義の日本では、学校でも企業でも、「正解」「成功」が評価の基準であり、失敗のプロセスは評価されない。

アメリカのシリコンバレーの合言葉は「失敗する自由」だといわれる。

地域全体に失敗を許容し、むしろ貴重な経験をしたと尊敬される風土があり、ベンチャーキャピタルは投資をする際に、経営者がいままでどのような失敗をしたかを聞くという。

失敗やチャレンジを奨励しないと、新しいサービスは生まれないのだ



経営者こそ、アンラーニングが重要


過去の成功体験に引きずられるのは、アンラーニングをしてないからだと思う。


「アンラーニング」は、既存の仕事の信念や方法をいったん棄却し、 新しいスタイルを取り入れること。

ビジネスモデルの変化が激しい時代、従来のやり方だけでは太刀打ちできない。

持てる知識・スキルのうち有効でなくなったものを捨て、代わりに新しい知識・スキルを取り込むことが重要だとされている。

常に危機意識を持ち、アンラーニングを心掛けている企業は、時代の潮流に乗ることもできる。コロナ禍において新規事業に乗り出した企業や、ビジネスモデルそのものを転換した企業は、アンラーニングが正しく機能した例と言ってよい。


ここで印象的な点は、「スキルを高めたベテラン人材ほど、学習を放棄してしまう場合が少なくありません。これまで自分が行ってきた方法が上手くいった経験があるほど、変化の必要性を感じられないからです。」という箇所だ。

カリスマ社長の現状維持へのこだわりがまさにあてはまる。


先のコラムで企業のサスティナビリティについて書いたが、自社の「あたりまえ」を見直し、新しい学びを習得・実践する文化を醸成することで、時代の変化に対応できる組織を作ることができると考えている。

逆に、どれほど経験と実績が優れていても、自分の型に固執すれば、衰退していく。

トップに忖度することなく、従業員一人ひとりが学びと挑戦する意欲をもち、互いにアンラーニングし合える組織は非常に強いと思う。


また、アンラーニングが促進されれば、能力や課題解決力が高まって業務効率が上がり、従業員にとって、精神的にも肉体的にも余裕ができるという。やりがいや主体性、挑戦心も生まれやすくなり、結果的に業績も上がり、顧客満足も高まっていく。職場においても信頼関係の構築などが期待できるとされる。


4月、会社の目標だけでなく、経営者自身が自己(個人)の目標を掲げて、成長してもらいたい。ぜひ、経営者こそ自己成長のためにアンラーニングを続けて、時代の風にのっていただきたい。


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